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方からも身ぶりや手ぶりを交えて教えてもらい、書道、珠算、園芸、図工などの手ほどきもしていただきました。息子の友人の中には、器用な人が多く、それぞれの方面ですぐれた人たちが少なくありません。反面、手話を教えてもらわなかったため、短い文章ならわかりますが、長い文章は内容が十分にわからないようです。
また、特に小学部一年生から四年生までの担任佐藤栄一先生からは、発音の基本をよく学びました。昔は今のように発音の機器がないため、ア行、サ行、タ行、ラ行の場合、口の動きを見、先生ののどに右手をあてて、自分ののどに左手をあて、また、カ行、ハ行の場合は先生の口に右手をあて自分の口に左手をあて、ナ行、マ行の場合は先生の鼻腔の外側に右人さし指をあて、自分の鼻腔の外側に左人さし指をあてて、声を出すなどして、熱心に指導していただきました。発音がだんだん覚えられ、お陰でいろいろな行事のあいさつには、児童、生徒の代表に何回も選ばれ、親として誇らしい思いでした。
中学部三年生のとき、現在の場所に学校ができました。新しい酒田ろう学校の卒業生第一号でした。そのとき、息子の就職のことなど考えもしなかったのですが、母に相談したら、「耳が不自由なので外での作業はあぶない」と言われました。家の中でできる仕事は天気に左右されない仕事だから、そのほうが良いと思い理容の仕事を選び本人にすすめました。
酒田ろう学校には高等部がないため、秋田県立秋田ろう学校高等部理容科に進学し、寄宿生活を送りました。専攻科のとき、理容師の国家試験に見事に合格し、酒田ろう学校の先生から紹介され酒田市内の理美容室に就職しました。

 

 

 

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